ベネズエラの秘境ギアナ高地にはテーブルマウンテンがたくさんある。
20億年前のものとも言われる岩盤の固い部分だけが残って、ほぼ垂直に切り立った岩山のことだ。
その頂上は麓とのあまりの気候の違いに独特の生態系をなすという。
おお、なんかすごそう!
その中のロライマ山(標高2810m)に5泊6日で登山するツアーに参加した。
頂上には古代の生物がいまだ生息しているかも!
そんな気持ちをSFにしたコナンドイルの小説『失われた世界』の舞台でもある。
麓の最後の集落から2日かけてロライマ山の真下のキャンプ地まで行き、3日目に頂上に登って泊まるのだが、新年を頂上で迎えようと日程を合わせた。
が、ツアーの集合地であるブラジル国境近くの町サンタエレナデウアイレンまでがまた遠かった。
12月26日に任地を出発。
まずは最初の目的地シウダーボリーバルへ向かうべく、目的地とは逆方面にバスで3時間。
任地からの最寄の町ではそこからしかシウダーボリーバルに行くバスが出ていないからだ。
しかし、ハプニング発生!
「バスはまだ?」と聞くと、「さっきもう出た」というではないか!
なにーっ!?
チケットを予約購入しておいたにもかかわらず、1日1本のバスを逃してしまった!!!
中継地や最終目的地の名前しか言わず、私達の目的地を言わなかったので気がつかなかったのだ!
事前に窓口に行き先伝えてあったんだから教えてくれてもよかったのにー!不親切な!
何とかならないかと懇願しても「何で注意して聞いていなかったんだ」「明日また来い」の一点張り。
ああ、すでに深夜11時半、ここでホテルに泊まるしかないのか!?
初日の出を頂上で拝むのは諦めるしかないのか…!?
それでも窓口に居座って泣きついていると、しょうがないと思ったのか、他のバス会社のバスがもっと遅くに出ることを教えてくれた。
ああ、なんだ、よかったああ!!!
困った人には優しいベネソラーノ
…って、早く言え!
さらに待つこと3時間、やっとバスが来た。
なかなかイイ2階建てバス。
トイレからの匂いが臭いこと以外は快適快適。
15時間後、シウダーボリーバルへ到着した。
そこで旅行会社に支払いをすませ、2時間ほど休んだあと、今度はサンタエレナデウアイレンへ夜行バス。
今度は小さなボロバス。
座席は倒れず、狭くてギューギュー、朝まで音楽やら落語(?)やらを大音量でかけている。
ヒドイ…
着いたらソッコー集合場所である旅行会社へ行って、そのままツアー出発。
2夜連続夜行バス移動で結構疲れていたが、未知なる世界へのウキウキ感とともに出発した。
我らがグループはベネズエラ人親子3人、アメリカ人青年、私と後輩隊員の6人と割と小グループ。それにガイド1人、アシスタント2人、ポーター数名(最初は確か3人。食料など減ってくので最後は1人だった)が一緒である。
ポーターは基本的にインディヘナの人々である。
なんとアドベンチャーな!
小さな小屋のようなものは違うグループの移動式トイレだった。
3日目、ついに山の頂上へ登っていく。
苔むしていて、どこか屋久島の森に似ていた。
この崖を登っているとき、なんと上から直径50cm以上はあろうかという岩が転がってきた!
右によけようか左によけようか、いや、さっと動くことなど出来ない!
ああああ!!どうしよう!!!
目の前に大きな岩がある、そこで止まってくれーーー!
と恐怖に陥っていると、前方で止まった。
ああ、助かった~。
恐ろしさで半泣き状態、足はガクガク。
その後は本当に慎重に登って行った。
頂上にて(すでに日本時間では新年)
頂上には洞窟のようになったところがいくつかあり、それらはホテルと呼ばれている。
雨が多いのでそこにテントを張るのだ。
だが、年末年始の人出で満員。
我らは岩がつき出た所の下にテントを張った。
4日目 新年
ご来光を拝むべくホテルの前の崖っぷち側へ行こうと呼びかける。
しかし初日の出なんていう考え方は日本人だけらしく、誰も興味を示さず私と後輩隊員2人で向かうことになった。
意外と池が多くて思うように進めず。
しかも霧がかって小雨も降っていて、寒い。
クリスタルがたくさんあったり、まるで他の惑星を歩いているかのような景色だったが、ずっと曇り&雨…
下界の恐らく素晴らしいであろう景色は全く眺めることが出来なかった。
私晴れ女なんだけどなあ。
「大勢の旅行者が年越しの瞬間大騒ぎしたからロライマの神が怒っているんだ。」とガイドやインディヘナ達は言っていた。
そんな~。
5日目は一番歩いた。
1,2日目に歩いた分を1日かけて一気に下るのだ。
下りは体力的にはそんなにきつくないのだがとにかく足にくる。
平坦な道はペンギン、下りは酔っ払いのような歩き方になってしまった。
そんな私を見かねたロシア人男性、なんと私のバックパックを持ってくれるというではないか!!
10kg以上はあると思われる私のバックパックを前に担ぎ、何度も「もう大丈夫だよ、自分で担ぐよ」と言っても、川を渡るときに別れるまでなんと3時間近くも歩いてくれた!
新年の神様!?
私を助けるために現れ、キャンプ地に着いたらいなくなっているのではないか!?
川を渡った後はツアーのアシスタント達が変わりばんこに持ってくれた。
ああ、私は優しさに生かされている…。
到着した後見かけたロシア人男性、明らかに疲れていた。
あ、ありがとう(涙)!
6日目、サンタエレナデウアイレンへ戻って来た。
ああ、ロライマともこれでお別れかあ…
などと感傷にふけっていると、なんと帰りのバスが無いと言うではないか!
旅行会社にチケット頼んでおいたから安心してたのに。
いつになったら帰れるんだ!?
だが、ここはベネズエラ。
そんなの知ったこっちゃないという感じである。
しかし、またまたラッキーなことに同じグループだった親子が車で来ており、翌日シウダーボリーバルの隣町まで乗せていってくれることになった。
足の筋肉痛はその後1週間続いた。
~おまけ~
トイレだって“男性”(ちょっと間違ってる)